当会にも小児がん患者ご家族から様々なご不安の声が寄せられます。自分たちにできること、知っておきたいことを聖路加国際病院小児科の小澤美和先生にお伺いしました.
本稿は、2020年5月発行の「のぞみ201号」に掲載されたものです。
新型コロナウイルスは、治療中の子どもに対してどのような影響がありますか?
新型コロナウイルスが、小児がんの治療にどのような影響を与えるかは十分に未だ分かっていませんが、がんの治療を受けていることが感染に対する抵抗力を低くし、重症化のリスクになる可能性はあります。しかしながら治療を中止、遅らせることは、がんそのものの治療にとってより悪い影響にもなりえます。何よりも感染を防ぐためにも、今一般的に言われていることですが、人混みを避ける、手洗いをする。そして、十分な睡眠と栄養、適度に体を動かして免疫力を高めることなどは重要なことです。不安なことや心配なことは、主治医や病院のスタッフに相談しながら、ひとつひとつ解決していきましょう。
過去に小児がんの治療を受けたことの影響はありますか?
やはり十分なエビデンスのある情報はありませんが、例えばイギリスのChildren’s Cancer and Leukemia Groupではガイダンスを出しています。その中では、過去12ヶ月に造血細胞移植を受けた、腹部全体や脾臓に放射線治療を受けた、長期間ステロイドを使用している、慢性的な肺・心臓・腎臓の疾患または神経症状がある場合は、特に気をつけたほうがいいグループとしていますが、その他の小児がん経験者については、一般の方とは変わりないとされています。一緒にいる家族全員が手を洗い、目や口に触れないように気をつけること、頻繁に触れる場所は定期的に綺麗にすることなどが言われています。定期的な検査などの受診がある場合には、主治医の先生にも相談をして、延期できるようであれば受診を控えることも一考ですが、治療後間も無い場合にはかえって悪影響になることもあるので自分で判断せずに必ず主治医と相談をして考えましょう。
小児がん患者・家族が注意することはありますか?
十分に気をつけ、感染の予防に努めながらも、怖がりすぎないことは大切です。そして、時間や場所を選べば散歩や適度な運動はできますし、年少の子どもにとっては親とのコミュニケーションも大切なことです。休校が長引くことによって、生活習慣が乱れることもあるかもしれませんが、こういう時だからこそ、しっかりと食事をし、十分な睡眠を取るなど生活リスムを整えましょう。電子媒体による一方通行になりがちの情報を楽しんでいた子どもたちですが、このような環境になると、身近に居る、そしてつながる喜びを改めて感じることができるものです。子どもの健全な成長に欠かせないこの体験をすることは、お互いの健康状態と、手洗いなどの感染予防を意識すれば、短い時間でも十分かなえられます。日本小児科学会のホームページには「普段と異なる状況下における子どもの安心・安全のために」、子どもをもつ家庭で出来る注意やQ&Aなどの情報が掲載されています。インターネット上には誤った情報などもありますので、かかりつけの医師や主治医、行政の育児相談、学校の先生、相談機関などからの情報を得ながら、まず、子どものそばにいる大人の気持ちを整えて生活できる状態であることが、子どもにとっては一番安全な環境と言えます。
参考になるサイト
日本小児血液・がん学会
「 小児血液・がん疾患と新型コロナウイルスの診療に関連した論文」
世界から集めた小児がん患者に関するCOVID-19関連の最新の情報を世界から集めたものを日本小児血液・がん学会 学術調査委員会で論文の翻訳、要約を作成され一般の方にもみていただけるページに掲載されています。
随時、更新されていくとのことです。
https://www.jspho.jp/activity/infection.html
日本小児科学会
「新型コロナウイルス関連情報」
https://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=333
日本臨床腫瘍学会「新型コロナウイルス感染におけるがん患者への対応 Q&A」
https://www.jsmo.or.jp/news/coronavirus-information/
Children’s Cancer and Leukemia Group
「コロナウイルスアドバイス」
Children’s Oncology Group
「コロナウイルスと小児がん経験者たち」
British Psychological Society
「子どもに伝えることの必要性」
https://www.bps.org.uk/news-and-policy/bps-highlights-importance-talking-children-about-coronavirus
厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00001.html
The International Late Effects of Childhood Cancer Guideline Harmonization Group (IGHG) 「小児及び若年成人がん経験者のための新型コロナウイルス(COVID-19)についてのステートメント」
このページのダウンロード版はこちらからCCAJのぞみ201号_新型コロナウイルス
2021年5月24日付で新型コロナウイルス感染症の発生状況を踏まえた指定難病、小児慢性特定疾病の受給者証の取扱いについて厚生労働省より情報提供がありましたのでお知らせいたします。
新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた特定医療費及び小児慢性特定疾病医療費の支給認定の柔軟な取扱いについて(2021年5月)
新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた特定医療費及び小児慢性特定疾病医療費の支給認定の取扱いについて(2021年1月)
新型コロナの影響を踏まえた公費医療申請の取扱(2020年4月)
2020年6月04日